近年の雇用情勢の改善は、経済指標としては歓迎すべき事ですが、人材不足を課題とする中小企業にとっては、団塊世代が65歳を過ぎるなど労働力人口の減少と共にリスクが高まっています。
人的資源が限られる会社は、1人がいくつもの役割を兼務するのが一般的です。プロ野球の世界でも、戦前戦後の人材不足期には多くの選手兼任監督がいたそうです。
創業期の会社であれば社長が営業・経理・総務・人事・企画・製造まですべてやるのは当然のことですが、人数が2人、3人と増えてくると、「リーダーシップ」と「マネジメント」といった役割が重要になってきます。野球では、良い選手が良い監督とは限らないと言います。また良い選手がキャプテンとも限りませんし、良いキャプテンが良い監督になるとも限らないでしょう。
「リーダーシップ」と「マネジメント」はどんな役割でしょうか?google画像検索しますと、イメージがわきます。
ウォーレン・ベニス氏の「リーダーシップの王道」では、マネージャとリーダーの違いについて以下のように書いています。
リーダー | マネージャー |
---|---|
革新 | 管理 |
オリジナル | 模倣 |
発展 | 維持 |
秩序を創り出す | 秩序に準拠 |
長期的な成果 | 短期的な成果 |
「何を、なぜ」を問う | 「いつ、どのように」を問う |
「可能性」に目を向ける | 「費用対効果(損得)」に目を向ける |
現状に「挑戦」 | 現状を「受け入れ」 |
最善を求め「規則を破ることも辞さない」 | 「規則や常識通り」に行動 |
「高潔な人格」 | 「能吏」 |
また、ジョン・P・コッター氏の「リーダーシップ論」では、以下のように記述されています。
リーダーシップ | マネジメント | |
---|---|---|
役割 | 組織をより良くするための変革を成し遂げる | 複雑な環境にうまく対処し、既存のシステムの運営を続ける |
課題達成プロセス | 進路の設定 人心の統合 動機付けと啓発 |
計画立案と予算策定 組織化と人材配置 コントロールと問題解決 |
もちろん会社はリーダーシップだけで成り立つわけでなく、リーダーという役職があるわけでもありません。必ずしも社長がリーダーである必要もありません。リーダーシップのある従業員がいれば、社長はマネジメントに特化しても良いし、マネジメントに優れた者がいれば、社長もある程度は営業や開発などに専念しても良いでしょう。あるいは業況の変化に応じて、リーダーシップを発揮したり、マネジメントに注力したりと臨機応変に役割をこなすことも求められるでしょう。
会社が継続していくためには、上記に上げられたような管理も革新も必要だし、維持も発展も必要です。大切なの事は、役職に関わらず会社の中に、これらの必要な機能があるかどうかです。もし不足している機能があれば、誰かが補っていかなければなりません。
しかしながら、人的資源の限られた状況では、適性やスキルの問題もあるでしょう。1人でなんでもこなす社長さんに、ある部分は従業員に任せてはどうかと聞くと、「まだまだ任せられない」と返ってくることがよくあります。実は、マネジメントとリーダーシップ、フォロアーシップだけでは、会社の継続には足らない物があり、任せられるような人材を育てることも必要と考えます。(マエダ)