今年は、第8回ラグビーワールドカップがイングランドで開催されました。次回は2019年に日本で開催される予定で、新国立競技場での開催が断念されたことでも話題となりました。また、2016年のリオデジャネイロオリンピックでは7人制ラグビーが男女共に正式種目となり、日本は、ラグビーワールドカップの熱気が冷めやまない11月に香港で行われたアジア予選で男子球技の中でリオデジャネイロオリンピック出場権獲得の第1号になったのに続き、女子代表「桜セブンズ」も東京で行われた予選で出場を決めました。
年末の恒例となった流行語大賞のトップテンには五郎丸(ポーズ)がランクインしました。五郎丸選手は、正確なキックだけでなく、トライも決め、大会第一週のベストタックルに選ばれるなどワールドカップの見どころを増やしました。その中でも得点につながるキック前にされる五郎丸ポーズは、仕事の現場でも取り入れられないか、「五郎丸ポーズの正しいやり方」を検索したのは私だけではないしょう。一般的には「プレ・パフォーマンス・ルーティン」と呼ばれ兵庫県立大学准教授の荒木香織氏のアドバイスによって取り入れたとそうですが、ハードワークしながらレベルアップを追求すればするほど、精度や成功率を上げることのメンタル面の重要性は高まるのだと思いました。

組織力

にわかファンながらラグビーが面白い最大の要素と思うのが「パスを自分より後ろにしか出せない」というスローフォワードという反則にあります。得点をするためには「前へ前へ」進まなければいけないのに、このルールにより組織的に前進しなければなりません。サッカーでも、オフサイドというルールで一定の制限があるものの、誰も受ける人がいないのに、前にパスしても面白くありません。

素早いアクション

もう一つの面白い要素として、ボールを持ってるとタックルされてしまうので、すぐにパスやキックなど次のアクションを起こす点です。更に、サッカーより判断を必要とする選択肢が多いように思います。印象的なのは南アフリカ戦の最後のシーン。選択肢は3点を狙うペナルティーキックと5点を狙うスクラム。前者は同点どまりで、後者は逆転勝利。当然高得点を狙うほど、0点というリスクも高くなります。結果はご存じの通り、歴史的勝利・奇跡的勝利などと呼ばれ日本中が沸きました。

自主性

この当時の南アフリカは世界ランキング3位で優勝候補の一角。ベンチの判断は同点でも勝ち点の得られる「ペナルティーキック」だったそうだ。日本代表ヘッドコーチ エディー・ジョーンズ氏は、ワールドカップ前のインタビューで、次のように言っています。「試合には常に混沌とした状態がある。それに対して準備をすることが重要。選手たちの自主性を引き出し、自分で判断することを促したい(日経2015/7/30)」

モチベーション

南アフリカ戦の勝利は、過去にワールドカップで1勝しかしないしていないチームが、勝率が最も高いチームを破ったわけですから、まさに奇跡と言えるかもしれません。エディー・ジョーンズがヘッドコーチに就任するまで、代表選手自身も南アフリカに勝てるとは思っていなかったかもしれませんが、試合前に「勝てる」という自信が無ければ、いいパフォーマンスができるわけがありません。ヘッドコーチ就任の「最初に取り組んだのは選手のマインドセット(心構え)を変えることです。」とも発言している。選手からは「この4年間、世界一きつい練習をしてきた」という発言は、自信を持たせるだけの体力面のトレーニングを物語っていますし、メンタルコーチを導入するなど精神面の強化についても重視したのは、勝つための改革として必然だったのかもしれません。

リーダーシップ

日本代表キャプテンのリーチ・マイケルは、「コーチ陣がリーダーを集めて『こういう作戦でいこうと思うんだけど、どう思う?』と話し合います。選手としても考えていることはだいたい同じで、キャプテンとしてすごくやりやすい。でも、相手の作戦もあるので、監督は『絶対に作戦通りはいかない』と言います。だから、うまくいかない時のためにプランBを作る。問題が起きたらすぐにすぐに解決しないと、どんどん悪い方向に進んでしまうから、問題が起きた時にどう解決するかが大事 (月刊事業構想2014年9月)」という。リーダーとマネージャの関係性について面白いと思いました。

グローバル、ハイブリッド

代表チームは、選手やコーチのルーツがグローバルであるだけでなく、野球の原辰則氏やレスラーの高阪剛氏など多様な分野からも人材を招へいしていたそうです。グローバル人材の育成や世代人口の縮小が叫ばれる昨今、1億総活躍でなく60億総活躍と行きたいところです。