先月、JTが飲料からの撤退を発表しました。缶コーヒー「ルート」や清涼飲料水「桃の天然水」のヒット商品を持ちながら、商品サイクルの短期化が事業環境に大きな悪影響を及ぼしているようです。

飲料市場全体が成熟し、事業規模が優劣を決する構造にあることや商品ライフサイクルが短期化する中で、安定的且つ継続的な収益基盤を確保するためには、積極的な販促活動で規模を追求しつつ、高品質・独自性を追求した商品を短期間で開発し続けることが不可欠な厳しい事業環境にあります。このような状況を踏まえ、将来の成長戦略について検討を重ねた結果、JT グループの中長期的な成長に貢献していくことは困難であると判断し、経営資源の配分など全体最適の観点から、2015 年 9 月末を目途に JT 飲料製品の製造販売事業から撤退することと致しました。 (日本たばこ産業株式会社 飲料製品の製造販売事業からの撤退について )

昨年、セブンイレブンの鈴木敏文会長の印象的なインタビューがありました。

昨年発売した「金の食パン」は、1斤6枚入りが250円(税込み、当時)と、製パン大手の売れ筋より5割以上の値段でしたが、おいしさが支持され、大人気商品になりました。これが発売されたその日に、私は開発担当者に、すぐにリニューアルに着手するように指示しました。リニューアル版は6カ月後に発売され、その後も手を休めず、リニューアルは1年間で計3回行いました。そこまで徹底しなければ、お客様の支持は得られません。結果は年間で3500万食という驚異的な数字に表れました。
(PRESIDENT 2014年11月17日号 対談:セブン&アイHD会長兼CEO 鈴木敏文×田原総一朗)

先月の日経新聞では、以下のような記述がありました。

消費の世界でも近年はヒットの「旬」が短い。少子高齢化で縮む国内市場のパイを奪おうと、メーカーや小売りは新商品・サービスを次々投入。動画サイトや「LINE」などSNS(交流サイト)も駆使して情報を拡散させるが、長く生き残る商品はまれだ。ネスレ日本の高岡浩三社長は「5年先まで残るヒット商品は少ない」と話す。(中略) キリンビバレッジが昨秋に売り出した茶、コーヒー飲料の「別格」は高品質の原料を使い、希望小売価格を破格の200円(税別)に設定。初回80万ケースを出荷し、大型ヒットの予感もあったが、その後失速し昨年末までの販売目標に届かなかった。価格帯を下げた商品を出して仕切り直す。(2015/2/23付日本経済新聞)

昨年のヒット商品が必ずしも今年売れるとは限らない厳しい環境だからこそ、経営判断とアクションも早期に実行していかなければなりません。(マエダ)