コンセプト

「誰に、何を、どのように売るか」という事業コンセプトは、開業時はもちろんのこと、新商品の発売や新店舗の出店時、流行や経済情勢などの変化に応じて、絶えず意識していなければなりません。

「1980 年代は、独占的であった航路に競合他社の参入が相次ぎ、航空会社間で乗客を奪い合っている状態であった。そのような中、1981 年に2 年連続で赤字であったスカンジナビア航空の社長にヤン・カールソンが就任した。カールソンは低価格施策ではなく、顧客満足度を上げる施策をうったが、可能な全ての顧客に対して満足度を上げることは難しい。そこで、狙う顧客を航空業界にて唯一安定した顧客層であるビジネス旅客に定めた。頻繁に出張するビジネス旅客から「世界最高の航空会社」という評価を得ることを目標に置き、ビジネス旅客にとっての価値は何かを考えた。ビジネス旅客は、一般の旅行客とは異なり単に目的地に着けばよいのではなく、到着先にて会議や商談が待っており、それに間に合うことが肝心である。そのため、運賃や航路よりも、一番大切なものは正確な到着時間である。そこで、スカンジナビア航空は、正確な時刻で発着する価値を提供することとした。例えば、乗り継ぎ便が遅延してもそれを待たない、乗務員が揃わなくても、規定の最小乗務員数を割らない限り定刻通り出発する、機内食の準備が整わなくても出発する等である。」(石井淳蔵著「マーケティングを学ぶ」)

スカンジナビア航空の例では、「ビジネスマン」をターゲットに、「正確な到着時間」を売るというコンセプトの元、他のサービスを犠牲にすることも辞さなかったわけです。

ビジョン

またコンセプトだけでなく「世界最高の航空会社という評価を得る」というビジョンを持った事も、成功の秘訣かもしれません。

「成功の秘訣? それは大きなビジョンが持てるかどうかだけだよ。ターゲットを見失わないことだ。そして自分が最も力を発揮できる範囲を見極め、そこに時間とエネルギーを集中することだ。会社の価値観や報奨システムもこの考えを反映すべきだよ」(Microsoft創業者ビル・ゲイツ)

コンセプトはビジョンを達成するための方法・戦略ですので、コンセプトは場合によっては変わることがありますが、ビジョンはあまり変わるものではありませんし、しっかりとしたビジョンがなければ、誤った戦略を選んでしまうかもしれません。